学部長からのメッセージ

建築学部長 野澤康 学部長から皆さんへ 『3つの心構え』

新しい年度となって新入生を迎えるにあたり、これからの大学生活において、さらにはその後の長い人生において、持ち続けてほしい3つの心構えをお伝えしたいと思います。
これは、新入生ばかりではなく、上級生にも通じるお話ですので、ぜひ、多くの皆さんに読んでいただきたいと思います。

「向学心」学問に真摯に向かい、励んでいく心構え

皆さんは、学ぶために大学に入学してきました。
あえて「学ぶ」と表現したのには訳があります。高校までは、「学ぶ」=「勉強する」だったかと思います。学校で授業を受ける、教科書や参考書で勉強する、ということが中心でした。大学でも、この意味で「学ぶ」ことはたくさんあります。ですから、大学の講義・演習・実験は最も重要です。きちんと出席して、内容を理解して自ら考え、単位を取得することが求められます。
しかし、これは大学時代に「学ぶ」ことのごく一部に過ぎません。特に建築学の世界では、「勉強する」だけでは足りません。私たちの仕事は、人々の人生の舞台となる建築やまちをつくったり、より良く改善したりすることです。単に建築というモノをつくっているのではなく、人々の人生や生活に深く関わるものなのです。
そのためには、世の中の様々なことを知らなければなりません。この場合、「学び」=「経験する」、「学び」=「感じる」などと表現できそうです。そして、それによって得たものをたくさんポケットに蓄えて、それを活用することが、大学在学中にも、社会に出てからも求められます。
言い換えると、建築学部で「学ぶ」ということは、「勉強する」「経験する」「感じる」などを総合化したものです。したがって、教室や設計室の中で完結するわけではなく、建築やまちという広大なフィールドで「学ぶ」ことが大切なのです。時間をつくって、大いに出かけて行きましょう!

「向上心」常に成長・発展し続けよう、先人を超えようとする心構え

私たちは常に成長し続け、進化していく必要があります。建築の世界でも、新しい建物が次々につくられ、その建物をつくるための技術もどんどん進化しています。
一方で人間はさぼったり、手を抜きたがったりする生き物でもあります。
私が研究室の学生によくお話している例をひくと、わかりやすいかもしれません。
卒論をスタートする際には、まずは研究室の先輩が書いた卒論や学会論文などをたくさん読むところから始めます。その時に、「こんな程度でいいや」と思ってしまうと、それ以上には進歩しません。「こんな程度」と思ったとたんにそれが上限となってしまいます。上限が決まると、それを超えなくなってしまいます。図1は、上限を決めてしまって、毎年、前年の先輩の90%の成果を出すことを繰り返していった場合の成果の総量を示しています。しばらくすると、成果の量は限りなくゼロに近づいていきます。それでは進化するどころか、退化してしまいます。図2は逆に先輩を超えて、例えば前年の110%の成果を出していった場合の成果の総量を示しています。これを見るとすぐに数倍の成果になっていることがわかるでしょう。
つまり、先輩たちの成果を超えていくことを目指して、努力を続けて行くことが重要なのです。もちろんひとつのひらめきでそれまでの何倍もの成果を一時にあげる場合もありますが、そこを目標とするよりも、努力をこつこつと積み重ねて、達成できる目標を達成するところから始めてみましょう。

成果の大きさ グラフ

「好奇心」様々なことに興味を持ち、ひとつの事象を様々な角度から見ようとする心構え

建築学の分野は、ほとんどの学生にとって初めて学ぶ未知の分野です。そういう意味では、好奇心いっぱいで大学生活がスタートしたかと思います。ぜひ、その気持ちをいつまでも持ち続けて下さい。あることを知ったら、そこで満足してしまうのではなく、知ったことを元に様々なことを考えるとまた新しい疑問が生じて、それを解決して新たな事柄を知りたくなる。学生時代に限らず、これからの人生ずっとそうであってほしいものです。きっと、そのほうがワクワクして楽しい人生になりますよ。
好奇心の話をする時にもうひとつ。新しいことをどんどん知りたいという好奇心に加えて、ひとつのモノ・コトを、ある一方からだけ見るのではなく、様々な側面から見てみるという好奇心です。例えば、数学の問題には正解はありますが、そこに至るまでの解き方には複数あることが多くあります。ある解き方ではなかなか解けなくも、別の解き方でやってみると意外と簡単に解けるかもしれません。また、世界最高峰のエベレストに登頂するのにも、比較的難易度の低いルートから相当難しいルートまで、何種類かの登頂ルートがあるそうです。
図3を見て下さい。単純な直方体が3つ並んでいます。ところが、これを後ろ側(逆方向)から見てみると図4のようになっていて、本当の直方体は真ん中のひとつしかありません。
様々なことに好奇心を抱くこと、様々な角度からモノ・コトを見てみること、これらは正解のない建築学の世界で生きて行くためにはとても重要な心構えであると思います。

図3 直方体が3つ並んでいる

図4 後ろ側から見ると...

この3つの心構えを忘れずに、失敗を恐れず、いろいろなことにチャレンジして行きましょう。

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