学部長からのメッセージ
学部長からのメッセージ 踏み出そう、新たな建築の道へ
工学院大学 建築学部長 鈴木澄江
工学院大学建築学部は、2011年4月に日本で初めて学科ではなく学部として始まりました。2021年5月に開設10周年の記念シンポジウム「建築学部 これまでとこれから」に全国の建築学部を擁する大学の学部長がリモートにより参集し、情報共有する機会がありました。それぞれの大学が建築教育に創意工夫をこらし、また、建築文化について分野を横断した取組みがなされていることがわかり、本学建築学部の教育を更に高めるための取組みについて考えるよい機会となりました。このイベントは、学内の学生はもとより全国の建築を学ぼうと考えている高校生にも広く解放したため、建築教育の裾野を広げる一助になったと思います。
本学の建築学部は、建築構造、建築生産、建築環境設備といった工学的分野ばかりではなく、建築計画、都市計画などの社会科学的分野、建築史などの人文科学的分野、さらにはデザインなど感性に訴えかける芸術的分野に至るまで、極めて広い領域をカバーしています。これは「建築」に携わる人は、これらの各種分野を統合化する能力を習得することが大切との理念に基づくものです。本学の卒業生の就職先をみると、設計や施工など、狭義の意味での建築分野に留まらず、デザインから都市設計まで幅広い領域の仕事を選ぶ学生が増えています。世の中のニーズに応え、未来を創る学生を輩出するため、本学部では建築の多様性を踏まえた3学科12分野を設置しています。
建築学部に入学すると、1年生,2年生のときは建築学の基礎である「もの、こと」を、3年生からは学科を選択して建築の「ありよう(What to)、やりよう(How to)」などの専門性を高める分野の学びに取り組みます。4 年生になると12分野の中の研究室を選択し,専門とする分野を定めていくことになります。さらに建築学専攻の大学院では、これら12分野の研究室において、高度な専門性を極めるための研究に取組むことができます。建築はありとあらゆるものが繋がって構成されており、専門を選ぶことは「自分が探求する分野」を先ずは定め、取組みをスタートさせることなのです。建築の分野における専門性を深めていくことは、幅広い知識の獲得と様々な人やもの、あるいは他の専門性などを繋げることができる人としての視野の広さや感性を培う訓練の積重ねであるともいえます。
人材育成の世界では,アルファベットのTの縦を「専門性」、横を「視野の広さ」に見立てて表現します。過去の日本では、1つのジャンルの専門家である「I型人材」の育成が積極的に行われきましたが、創造性のある人材が必要とされる現代では、専門性と実務を融合させるために「T型人材」のように幅広い知見を持つ人材が重要な存在になります。更に、専門的な知識が枝分かれするY型を経て,工型は,強い専門性を誇る分野が1つあり、他者の専門性と自身の専門性を繋げることができる「架け橋」となる人材を意味します。建築の世界でも、このような他者と連携する力を持つ人材が求められています。
大学・大学院での学びは、自ら求め、判断し、自分自身の能力やスキルを高めていくものです。与えられることを待っているだけでは先には進めません。新しい取組みに臨むと、上手くいかないこと、勇気がいることも沢山あります。しかし、上手くいかないことを恐れず、あきらめず、こつこつと取り組んだ先には、必ず光明が射すと信じています。「あきらめない限り失敗はない」ともいえるでしょう。
コロナ禍以降、DX化やAIの台頭が著しい昨今の世界は、これまでの社会の延長線上に正解がない時代になるといわれています。物事や社会情勢をよく観察し、建築社会のしくみを理解するとともに、皆さんが社会に巣立つ時に「私はこう考える」と自信をもっていえる建築人になれるように、大学・大学院での自身の学びを是非、探求してください。
自分の道は自分でしか見つけられません。自分が歩む新たな「建築」の道を見つけ出すために、一歩、踏み出してみましょう。
建築学部長 鈴木 澄江

